120年ぶりの民法改正にあたり、賃貸の更新時における運用の注意点について解説していきたいと思います。
賃貸借契約と保証契約の関係
原則、2020年4月1日より前に締結された契約については、改正前の民法が適用されることになり、4月1日以降に契約されたものに関しては、新民法が適用されることになります。
ここまでは、理解できると思いますが、では4月1日以降に契約更新したものに関してはどうなるのでしょうか?
以下の例で考えてみましょう。
- 2018年4月10日に賃借人Aは契約期間2年間の賃貸借契約(普通借家契約)を締結した。この際、親族Bが連帯保証人となった。
- 2020年4月9日に賃貸借契約満了により、賃貸人と賃借人Aは合意更新を交わした。
この場合、2018年当初に取り交わした賃貸借契約は改正前の民法が適用されることになりますが、2020年4月9日に取りした合意更新に関しては、新民法が適用されます。
では、上記の契約が改正前の2020年3月中において賃借人が更新契約に署名押印した場合に関しては、どうでしょうか?
このケースの場合、賃貸人、連帯保証人Bも2020年3月中に更新契約書に署名押印していたのであれば、新民法は適用されることはありません。しかし、賃貸人、連帯保証人Bが、4月1日を超えて署名押印をすると新民法が適用されることになるので注意が必要です。
連帯保証人の対する新民法適用について
先の例の続きで、
- 2020年4月9日に賃貸借契約満了により、賃貸人と賃借人Aは合意更新を交わした。(更新契約に4月1日に各々署名押印を行った)ただし、連帯保証人とは、更新契約を行わなかった。
この場合、4月1日に賃貸人、賃借人が合意の上、各々更新契約に署名押印を行っているので、新民法が適用されます。
しかし、施行前に締結された保証契約において合意更新がされていないため、施行前の民法が適用されることになります。つまり、極度額の制限を設ける必要はありません。
3つのパターン
実務的には、契約更新に関して、3つのパターンがあると思います。
- 賃貸借契約の合意更新を行わず、自動更新とする
- 賃貸借契約及び保証契約の合意契約を取り交わす。
- 賃貸借契約の合意更新は行うが、保証契約は行わない。
この場合、実務的に行うとしたら、最も望ましいのは3だと私は思います。
その根拠は以下の通りです。
1のバターンは自動更新のため、期間の定めのない契約になってしまうこと、それにより今後更新料を得ることができなることが挙げられます。
2のパターンは賃貸借契約の合意更新を取ることは良いが、連帯保証人と合意更新を交わすと新民法が適用され極度額の制限を設けないといけないことが挙げられます。(賃貸人にとっては、根保証のままの方が有利)
また、連帯保証人が合意更新を拒絶した場合の対応について問題が生じるかの末が出てきます。原則、契約当初取り交わした保証契約は、賃貸借契約が更新されると、引き続き継続されます。
継続されるにも関わらず、こちらから保証契約の更新を求めることになります。例えば、契約者が滞納していたとします。そして、連帯保証人にも催促の連絡が入っていたとします。そこに、期間満了による保証契約の合意の案内がその連帯保証人に来たとします。
果たして、すんなりと連帯保証人は合意して契約を更新してくれるでしょうか?
おそらく、もう連帯保証人を続けたくないと申し出るのではないでしょか?
実際には、連帯保証人がこのように申し出ても、賃貸借契約の連帯保証人がいなくなるのは賃貸人としては、困ります。
賃借人に新たに別の連帯保証人を立ててくれと伝えても、滞納を繰り返したその賃借人が新たに連帯保証人を見つけてくることも難しいと思います。
そのように考えると、パターン③の賃貸借契約の合意更新は行うが、あえて保証契約の合意更新は行わず、自動更新で進めていくことが良いと思います。
要注意
ここでパターン③で行くとしても、注意が必要です
それは、賃貸借契約の更新契約の署名押印蘭です。その蘭に賃貸人(甲)と賃借人(乙)の署名押印蘭(スペース)があると思います。その下に連帯保証人(丙)の署名押印する蘭があれば、(←実際に契約書雛形でよく見かける形式です)その蘭(スペース)自体を消しておくことが無難です。
もし、連帯保証人から、その更新契約の署名押印蘭(スペース)に私の署名押印がないので、連帯保証人ではないと主張される可能性が出てきます。契約当初の契約を連帯保証人は引き継ぐことになるとこちらが主張しても、引き続き連帯保証人になりたくない人は、署名押印がないことを反対に主張してきます。
そのようなことがないように連帯保証人のスペースは修正液等で予め消しておくことが必要です。