賃貸物件を運営するにあたり管理会社と管理委託契約(以下「一般管理」といいます)を締結するか、或いは、不動産会社に物件を一括で借り上げて貰う一括借上(サブリース)契約を締結するの2つの方法があります。今回は、この一括借り上げについてメリット、デメリットを交えて説明していきたいと重います。
一括借上契約とは
一括借上契約とは、不動産会社がオーナーの物件を建物一括で借上げる契約の事を言います。借上契約した不動産会社は、各部屋を募集に出し、エンドユーザー(入居者)と個々に賃貸借契約を締結します。
一般管理と違い、入居者が契約しているのは、建物オーナーとではなく、不動産業者と契約していることになりますので、入居者とオーナー間において、家賃等の授受はなく、入居者は不動産業者に家賃や契約金を支払うことになります。
なお、建物オーナーは不動産会社から予め決められた借上賃料を受け取ることになりますが、入居者が支払う礼金や更新料はオーナーに入らずに、不動産業者に入ることになります。
項目 | 支払う人 | 受取る人 |
礼金 | 入居者 | 不動産業者 |
敷金 | 不動産業者 | |
仲介手数料 | 仲介会社 | |
家賃 | 不動産業者 | |
共益費 | 不動産業者 | |
保証料 | 保証会社 | |
保険料 | 保険会社 | |
更新料 | 不動産業者 |
オーナーに支払われる借り上げ家賃
オーナーには、対象物件が満室になった場合の総賃料のおおよそ10%が借上げ金額となります。ただし、戸数が少なかったり、駅から離れている、築年数が経過しているケースは15%以上となる場合もあります。
一般管理の管理手数料(通常)5%より、借上げ契約の方がオーナーにとっては、10%と倍近い数字となり、また礼金や更新料収入も来ません。ただ、オーナーにとっての借上げの最大のメリットは空室になっても、安定した収益が確保できるということです。
例えば、以下のような物件があった場合を例に考えてみましょう。
例1(借上契約) |
総戸数:10戸 各部屋:10万円 のアパートを管理会社が90万で借上契約を行う場合 |
アパートが満室の場合、入居者が支払う賃料の総額は100万ですが、実際にオーナーが手にする家賃は90万となります。
空室がでた場合はどうでしょうか? |
1部屋空室になった場合も、2部屋空室になっても、オーナーが手にするのは90万円となります。(極論、すべての部屋が空室になっても90万円が入ります)
オーナーにとっては、空室リスクに左右されずに、安定した収入を確保できるというメリットがあります。また、毎月のローンも計画的に返済することができるので、精神的な負担も少ないといえます。
もし、一般管理での契約だったら・・・
以下のような物件があった場合を例に考えてみましょう。
例2(一般管理) |
総戸数:10戸 各部屋:10万円 のアパートを管理会社が管理会社が管理手数料5%で 管理を請け負った場合 |
満室であれば、10万円×10戸=100万円となり、そこから5%の管理手数料5万円が差し引かれ、オーナーの手元には95万円が入ることになります。(借上契約の場合は、オーナーには90万円入るので、一般管理の方が5万円多く入ることになります)
空室が1部屋になった場合はどうでしょうか? |
空室1部屋であれば、家賃合計は10万円×9戸=95万円となり、そこから5%の管理手数料4.5万円が差し引かれることになりますので、オーナーには90.5万円が入ることになります。(借上契約の場合は、オーナーには90万円入るので、一般管理の方が5000円多く入ることになります)
では、2部屋空室になった場合はどうでしょうか? |
空室が2部屋であれば、家賃合計は10万円×8戸=80万円となります。管理手数料5%の4万円が差し引かれ、オーナーには76万円が入ることになります。(借上契約の場合は、オーナーには90万円入るので、一般管理の方が14万円実入りが少なくなります)
利益祖反
一般管理の場合、空室がでると、オーナーも管理会社も収益がともに下がりますが、一括借り上げの場合は、上記のようにオーナーと不動産業者の関係は利益相反しているといえます。
また、空室の場合でもオーナーは確かに安定した借上賃料が入りますが、通常2年ごとの借上げ賃料の見直しがあります。その2年間で空室が続き、不動産業者も利益が出なくなった場合、オーナーは借上げ賃料の見直しをされる可能性もあります。
最近とあるハウスメーカーでも30年家賃保証などの謳い文句で物件を立てさせ、家賃がとれないとなると数年後に借上げ賃料の見直しを責められたという話がありました。さらにハウスメーカーの施工不備が散見されたので、問題をさらに深刻化複雑化させました。
なお、欧米においては、この借上げ契約というものは存在しません。不動産管理士(プロパティマネージャー)は、オーナーの持っている資産価値を最大限化するために存在しますので、利益相反する借上契約という発想、概念がありません。
一般管理と借上げ契約どちらが得?
では、オーナーにとって、どちらの契約が得なのでしょうか?
これは、オーナーが所有している物件や考え方、立場によって変わってきます。保有している物件に力がある(空室になってもすぐに決まる)のであれば、一般管理で十分です。
また、駅から遠い、人気のない物件なので、空室になったら、なかなか決まらない。毎月のローンの支払いが厳しい、募集の状況が気になってしょうがない、、、などのオーナーは一括借上契約を選択されたほうが良いと思います。ただ、その場合、不動産業者もリスクを背負うことになるので、一括借り上げができない場合もあります。
不動産会社に相談することも手ですが、一括借上は、オーナーと利益相反するので、不動産会社からこれにしましょう!と太鼓判を押すことも難しいところです。
結論としては、どちらの契約で進めるかはオーナーの考え方やローンの支払状況、物件に対する思い入れによって、一括借上で行うか一般管理で行うかは変わってくることになると思いますので、そのぞれのメリットデメリットをオーナーは理解したうえで契約を進めていくことが重要になってきます。